2007年9月号(VOL-2)
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                                 松井 高
 今年の4月から毎週水曜日午後に相談窓口(ポルトガル語通訳・翻訳)を担当することになりました松井高(まついたかし)と言います。遅ればせながらですが、皆さんよろしくお願いします。


《社会を考える大切な仕事》      
相談事業と言っても皆さんには少しピンと来ないかもしれません。とても地味なことをしていると思っている人も多いことでしょうが、私自身は最も大切な協会の事業の一つであると思っています。また、今私たちの社会がどこへ向かおうとしているのか考えさせられることが多いのもこの相談事業です。


《多い税に関する相談》
 例えば、相談の中でも最も多いのが税金に関すること。相談窓口に来られる方の大半は南米国籍者なのですが、その多くは所得税が減税になったことを知らなかったり、通常の給与明細を見てもその内訳がよく分からないために所得税が毎月どれだけ差し引かれているのかということを知らなかったりすることが多く、今年の6月に突然住民税がアップしたことに驚いたようです。


《日本の物づくりを支える貴重な人たち》
また南米の方たちが勤めている会社のほとんどは派遣会社ですが、派遣会社の中には、年末調整で会社が税務署から受け取ったお金を本人に渡していないこともあります。日本人であれば社会保険が完備されていても、外国籍の人たちの場合、工場などで日本人の時間数以上働いていても社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険)に加入してもらえていないケースがほとんどです。けれども、そういったことを不正だと言えばいとも簡単に首が切られてしまう、社会的に弱い立場にあります。こういった人たちが日本の物づくり(自動車、電機、半導体、化学、住宅建材など)を支える貴重な労働力となっているのですが、不条理な目に合うことが最も多い層であると言えるかもしれません。
相談者の中には十代の母子家庭も珍しいことではありません。時間給800〜900円で働き、幼い子を必死で育てている姿に触れれば、こういった人たちにこそ優しさのある社会になってほしいと心から願います。


《格差社会の実態にふれて》
私はかつて、ブラジルのストリートチルドレン(路上生活をしている子ども)の実態を知ろうと出かけたことがあります。公園や住宅街の外れで生活し、小学生ぐらいの子どもでも昼間からドラッグにふけっている様子が見られました。格差社会が抱える問題は、世代から世代への負の連鎖が起こることです。どれだけ働いても親の収入は増えない。安定した職がない。子どもの教育にかける時間と金銭が少ない。不安定な環境の中での子どもの学習モチベーションは下がり、また進学のための経済的余裕もない。努力しても報われない社会構造ができてしまう、それが格差社会の恐ろしさです。
 海外のような極端な格差は広がっていないにしても、日本社会の中での格差も確実に進行していると、私自身この相談事業を通じて日々痛感していることです。「持ちつ持たれつ」という日本の伝統は薄れ、社会保障や教育の機会均等(例えば、外国籍の子どもの場合、義務教育とはなっていません)までもが崩れている現状は悲しいことです。
外国籍の人たちの暮らしの状況を少しでも知っていただき、国際交流のみならず国際化の取り組みについても充実してもらえるよう、RIFAには期待しています。

2007年9月号(VOL-2) 
    
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